花井はいつも最初に出すのが決まっているんだよ、と
ジャンケンで負け越した俺は小学生のとき友達に言われたことがあった。
そんな俺よりジャンケンの弱いさん23歳。付き合ってまだほんの少し。
俺はというと、そんな屈辱的な言葉を他人に使える日がようやく来たのかと、ばれないようにちょっとだけ笑った。
















共同作業罰ゲーム













「いっつもおんなじなんスよ」
「ああ?なんでそれ言わないんだよお!!」
突っかかってくるさんの鈍くて痛くもなんともないパンチをわき腹に受けて
俺はバカみたいにヘラッヘラ笑っている。

4月の異様に暖かい日。さてと冷蔵庫を開けた篠岡が見たものは
なぜか真っ暗、プラスワンで異常な匂い。
どうやら何かの拍子に準備室の冷蔵庫のコンセントが抜けていたらしく
素直に事情を話すと、ひやかしで遊びに来ていたが面白がって
「じゃあジャンケンで買出しいこーぜ」
そう切り出したのが20分前。
正直な話、飲み物の氷もないのも困るがビリでもないのに白ムスビを食うのもまたしんどい。
散々考慮して百枝にも相談したら、しょうがないから2人と提案され
のひやかし罰ゲームは受理される運びとなったわけだが
「何やってんのさん、やりますよジャンケン」
そうアッサリ阿部に言われ、自分もまさか入っていると思わなかったは少し後悔した。
そして篠岡、を加えてのジャンケン大会が行われたわけで
最初の一発で勝敗が決まるとは、誰が予想出来ただろう。出来るもんかばかやろー。


とりあえず大丈夫そうなのは梅干くらいなもので、あとは申し訳ないが生ゴミになった。
お買い物リストを見て、もし自分とチヨちゃんだったらあんたらひどいよこんなにいっぱい重いもの持たせてとか
そんなグチをしてみても遅い。近所のスーパーまで、2人は健全に2人乗りで向かう。
「あーもー久しぶりに来てみたらー」
さんが言い出したんじゃないっすか」
「あーーーーーーーーーもおおお」
煮え切らないが足をバタつかせ、自転車がグラっと揺れる。
「ちょ、あぶねーから!」
「あああああああああああ」
「おとなしくしてくださいよ、もう」
「もおおお、あ、ネコだー花井君ネコー」
「はいはい」
「触りたいネコーこねくりまわしたい」
「はいはい・・・」
まったく、なんだってこの人はこう自由奔放というか破天荒というか。
そんなとこも好きなくせに、花井はまったく素直じゃない。特に阿部なんかいっつも思うわけだけれども
振り回されて喜んでるくせにさ。


スーパーについたらついたで、花井は一目散にカートを持ってきたに溜息をついた。
「いらなくないっすかソレ」
「なんで??氷とか牛乳とか重いよ?」
「じゃなくて」
なんで子供の乗るトコついてるヤツなんですか、と言うと
「便利なんだよ!あのー・・・ここティッシュとかのせれるし!」
「んなモン買いません!戻してきてください」
「ええー」
ぶーたれながら普通のほうに交換してきたからカートを取り上げる。
「なに、ひきたいの」
「あぶなっかしーんですよ、さんは」
またしても唇をゆがめ、変な顔をして見せたに花井は気づかれないようにと顔をそらしたのだったが
そんな分かりやすいの、様が見逃すわけない。
「なーん、笑ってんのー」
チョイチョイと人差し指でわき腹をつつく。
「ちょ、やめ、くすぐってぇ!」
「笑え笑え」
「こらっ、さん!!」
ちょっと、スーパーでイチャイチャしないでください邪魔だから。
夕方の2割引きのシールを貼りに来たパートのおばちゃんが、いやな顔をした。


「ってか罰ゲームになってなくねえええ???」
準備体操をしながら田島が我慢できずに叫んで、声は大きい空に吸い込まれていく。
行くんだったら俺行ったし!」
「んな事言うんだったら俺が行ったよ!」
田島の背中を押していた水谷まで賛同すると、少し離れたところで阿部も溜息をついたり。
んな事ゆったら全員そうだっつーの。あー、俺もたまにはさんと2人で歩いてみてーよ。
花井が一緒なんていつものデートじゃん。
あ、これってデートじゃね?何俺ら本気ジャンケンで勝ってデートさしてんの??うっわ・・・
ムカついてきた。
「ったく・・・仕組んだんじゃねーだろーな」
らしくない阿部の負け惜しみに、こちらも背中を押していた巣山が噴出した。
「何、阿部でもそんな事言うんだ」
「・・・わりーかよ」
「べっつにー?」
空は赤くなりかけている。早く戻って来いよ・・・あ、もー、時間制限しとくんだった。まじしくったあーアアアア。



「ちょっとほんっと、まじ勘弁・・・」
震える花井をヨソに、は心底楽しそうに笑っている。
もうっ何このコ!どうかしてるわ!!まったくそんな心境。
さん、もー停めて、まじこええから!!」
「花井君がバランス感覚ないんだよったくうっせーなー」
うっせーなーじゃないでしょうよ!!
帰り道の2人乗り。後ろが花井で前が
けっこう後ろの席はケツが痛いんだだから交代してみませんか。なんでOKしちゃったの俺ほんっとバカ。
大体、こんなほっせー体で俺なんか乗せて平気で進めるわけないじゃん。
なんでこの人って人はほんっとに・・・
「ねー花井君」
「はい」
「あたしさあ、絶対最初出すの決まってる?」
あー、ジャンケンの事っすか。会話定まんねーなあほんっと。
花井は空を見上げる。今日はきっと、きれいな夕日になるだろう。
「決まってますよ」
そう笑って答えた花井に
なんでじゃあおんなじの出したのさ、なんてヤボな事、聞かないでおいた。
あーあ。ほんっと、優しい人。
優しくて可愛い、あたしの彼氏。


「ねー花井君」
「なんすかー?」
「あのねっ」
ぐっと足に力を入れると、吸い込まれるように下り坂。
悲鳴を飲み込む花井にヤケにうるさいブレーキ音。






「楽しかったー、共同作業罰ゲーム」


「え?ちょ、聞こえないっす!」
































サンスモ番外編・「恋を唄う」ステキ企画に参加させていただきました。
元の歌ゼンッゼンしらねーのでてんでオカト違いになってしまった。ヒィ。

他の参加者さまの作品、胸キュンで最高やよ!
(※皆様にご迷惑のかからないように楽しんでくださいねー)


管理人・東雲 灰さま