『ラブソングを歌って―あなたサイド』

もーやめたいやめたいやめたい
とキーボードをたたき始めて何時間になるだろう。
嫌になるくらい羅列された汚いメモにウンザリしながら
ほとほと自分の計画性の無さに呆れる。
もーやめちゃおうかな1時間寝ちゃおうかなと思った時かかってきたあの電話のせいで
あたしは40分しか寝られなくなった。

未定の予定を残して切った電話の後、そっとスケジュールを思い出す。
いつならいけそうだろう。きっと来月になる。
来月は観たい映画あったかな。
別に観たくなくても高校生の好きそうなの選べばいいんだろうけど
きっと花井君はどんな映画で、例えそんじょそこらの惰性のアイドルが歌ってるような曲が主題歌でも
絶対待ち歌にしちゃうに決まってる。
付き合いは長くないけど、分かっちゃうんだよ。
分かってしまうんだなコレが。
だって多分あの子、あたしの事好きだから。

こんな性格してるけど
結構不安というか、そうゆうのがあるのは認める。
相手は高校生だし、あんだけ必死にすがりつかれたって
いつかは離れていく日が来るんじゃないかと思ってる。

例えば今まで好きになってきた人には
誰にだってそんな淡い期待を持ってたのに
気づけば、そう、思い出そうとしないと思い出せないくらい
そんな感情はとっくになくなってて。

「でもヤだなあ」
花井君までそんなふうにするのは、嫌だなあ。
一生、一緒にいて欲しいなんて気持ち悪いこと言えないけど
そんなの叶わないの分かってるから
分かっちゃう大人だから、こんなに余計なこと考えちゃうんだろうな。
「やだなあ」
やだやだ言ったってどうしようもない。
今は、今は、ううん、多分明日もきっと
『あ、さん今何してました?』
寝る前に電話かけてきてくれるくらいは、あたしの事を花井君はきっと好きだと思うから。
ちょっとでも先延ばししたくて
予定を未定にしておいた。

待ち歌って、相手指定もできるんだよ。花井君は知らないだろうけど。
笑ったりとかひいたりとか、してほしくないから言わないけど
キミが気にかけてくれたあの待ち歌はねえ
キミにしか聞こえないんだよ。

あの歌はねえ
多分、あたしから花井君へのラブソングだと思う。
初めて「君を」待ちに行ったコンビニまでの車のラジオで
この曲が流れてたんだよ。
絶対、絶対、絶対誰にも言わないけどね。



















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