『昼休みのラブコール―花井サイド』
昼休みが始まって20分と少し。
別に早食いってわけでもないが、今日は割と早くご飯をたいらげた。
ちょっと物足りないなと思いつつ
周りを見回すと、阿部と水谷が野球談義に花を咲かせている。
ちょい乗り遅れたなーと思いつつ、暇つぶしに携帯を開いて
さんと今メールできたら、幸せだよな、と気づいてしまった。
電話帳から呼び出すとき、の文字を見るだけで
胸が高鳴る。どうしよう、俺、ほんっとバカだ。
件名:どーも
本文:こんにちわ。
無視してくれてかまわない。そうゆうメールのつもりだったのに
心の中では返事期待しちゃって、手に汗がにじむ。畜生。
たっぷり1分置いて来た返事を見て
俺は思ったね。神様ありがとうって。何がって、もうなんか色々。
件名:どーも
本文:こんにちわ。
同じ内容。どこか寂しくて、すっごく嬉しい。
まるですれ違った人とする会話みたいな、ほんっとにくだらないメールを
保護してしまう自分が、知れたらと思うと恥ずかしい。
件名:今日
本文:いい天気ですね
公園でひなたぼっこでもしてるおじいちゃんおばあちゃんみたいな。
そんなメールを送ってしまう。でも、特に用事が無いのでしょうがない。
こじつけてもいいけど。なんかそうゆうの、苦手。
件名:お昼
本文:何食べようかな?
その返事に席を立った。
ひたすら、同じ階の便所へ向かって。
幸い一番奥の個室があいてたのでためらうこともなく入る。
携帯を開いて、の電話番号を、そっと、押した。
『もしもーし』
「あ・・・ども」
『なに、どしたの?』
あれ。なんだこの、距離感というか・・・温度差?
「あのっ」
『はい』
「俺・・・あと30分しか昼休みないんでっ・・・」
『え?』
あれ?なんか、違う?
「あのっ・・・さん今、どこなんスか?」
『・・・家だけど?』
次の瞬間、ポロリと携帯が手から滑り落ちて派手な音を立てた。
はっとして慌てて拾う。よかった、電話はつながったまま。
「なっ・・・」
『え?』
「な・・・なんすか今のメール??」
『は?』
今のメールって、その、つまり。
『何って・・・何食べようかな〜と思って』
「は?」
『いや・・・寝起きっすよ』
ね、寝起き???ちょ、ちょっと待って・・・まさか俺!!
「あ、ああ!!」
『う・・』
やばいやっちゃったやっちゃったよおおお!!
「な・・・なんでもないっす!!」
『はい?』
「なんでもねーっす!!」
『はあ?なんなの??』
ケタケタ聞こえる笑い声に、顔が赤くなる。やっちゃったよ俺、最高恥ずかしい。
「もー・・・なんでもないっす・・・まじ」
『何さぁ』
ふんわりただようような声。ああ好きだ。好きです。好き。
繰り返しても届かない、こんな、深い心の中じゃ。
『花井君』
「・・・はい」
『いい天気ですね』
「・・・そーっすよ」
それから予鈴が鳴るまでの25分間。
昼食に誘われたと勘違いをしてしまったのをひた隠しにして
くすぐったい会話を、続けた。
Go-your side.
Go-other side.