7組の3人が、終わりのHRを終えてグラウンドにたどり着く。
小さなベンチにうごめく塊が、9組の3人と・・・だと分かるまでさして時間はかからなかった。
今日も、外は、寒い。
Thank-you Smoking.-----2
あ、さんだ!!!嬉しそうに足を速めた水谷に、阿部と花井は同じペースでゆっくり近づく。
目の前で手を挙げて微笑むに、2度目の対面ながら男子高校生は少しだけ照れた。
「よー、花井君と阿部君」
「ちす」
「ちわーっす」
会釈をして状況を把握しようと顔を上げた。を囲むように、右に田島で左に三橋、向かいに泉。その間に水谷。なにこれ。
「なにしてんの?」
阿部の問いに、まるですっかり飼い慣らされた犬みたいに田島はキラキラした目だった。
「の事色々聞いてたんだよ!」
「質問攻めにされとるわ、あたし」
そうゆうやりとりにケラケラ笑う5人。ほんと、なんだこれ?この和気藹々ムードは?
はグレーのパーカーに両手を突っ込んでスキニージーンズを履いていた。まったく、三橋も細いがもなかなか細い。
「これ」
泉が手にしていた雑誌を広げてみせる。花井は素直に受け取ると、阿部にも見えるように傾けながら目をやった。
見開きのページには見た事も無い森林が広がっていて、そこにワンピースの女の子が1人ポツンと立って笑っている。
どう見てもそれはでもなければ知り合いの誰でもなく、?を浮かべる花井と阿部に泉が指を立てた。
「サツエイシャ」
「撮影者?」
真っ白の字で抜かれたページの隅の小さな小さな文字を見ると、モデルの名前は知らなくて・・・
撮影・
そうくっきりハッキリ、見えた。
「え??何?」
「ソレが撮ったんだぜー」
何故か自慢そうに水谷が言う。いやいや、お前が威張ることじゃないし。
「それはまぁたまたま、知り合いに誘われて一枚撮っただけですけどぅー」
「す、 すご、ぃです!」
三橋の尊敬のまなざしに照れるでも奢るでもなく、は落ち着いた表情だった。
「カメラマンなんスか?」
幾分落ち着いた口調の阿部に、ニッコリ笑っては答える。
「普段はフリーのライターだよ。ここらへんの地方紙がもっぱら専門です」
カメラは趣味みたいなモンかな、と鞄から無造作に取り出したのは、一眼レフのデジカメだった。
「わーすげえ!触らして!」
「いいよーはい」
いとも簡単に田島なんかに渡してしまったに、いいんですか?と花井は心配そうに言う。
「いーのいーの」
けろっと笑うに、うぐ、と言葉を制されて。花井はそれ以上特に何もいえなかった。
しかし田島。お前、ほんっとにこわいんだけど。見てるこっちがヒヤヒヤする。
「どやってとんのー?」
「んとねーここで電源でーあとはここまわしてー。あ、右手で」
新しいオモチャを手にしたようにキャッキャキャッキャとシャッターを押しまくる田島に呆れながら、花井はふとまわりを見渡す。
「しのーかは?」
「あー、チヨちゃんは飲み物の準備だよ」
「え?」
手伝わなくていいんですか。はそんな花井の表情をいとも簡単に見抜いた。
「いーんだよ、ちょっとづつで」
「はい?」
なんだこの女。正直、そう思った。さっきから練習前だっていうのにしのーかも手伝わないし田島や三橋や泉や水谷と遊んでばっかだし
ほんとにやる気あんの?
まぁ、所詮は1週間だけの軽い遊び気分って事なんかな。あー・・・なんか株価下落。
「っつかお前ら!いい加減準備しろ!」
切り替えるように花井は活を入れると、ちぇーっとツマラなそうに田島はにカメラを返しバタバタと部室にかけていった。
他の3人も後を追うように部室に足を向け、阿部も歩きながらそれに続く。
残された花井が少しだけ残念な表情でを見たあと歩き始めようとしたとき、彼女は立ち上がって小首を傾けた。
「急に全部はダメでしょ」
「・・・何がっすか」
「急に全部、チヨちゃんの仕事奪っちゃダメなの」
それって寂しくならない?チヨちゃん。
ただでさえ思い入れの強い、休みも笑顔で受け入れられないくらいマネジの仕事が好きな篠岡。
しかもお年頃。臨時とは言え急に入ってきたがなんでもかんでもやったら、寂しくなるに決まってる。
「あ」
花井が気づいたようにそう言うと、はカメラを花井に向けて迅速にシャッターを押した。
カシャコン、という一眼レフ独特の心地良いシャッター音が響く。
「なっ・・・!!」
「超良い顔してたよ」
ニヤリと笑ったに、さっきの自分の子供っぽい結論に、花井はたちまち顔を赤くし始める。
「なっ・・・・な!」
「なーなー言わない。キャプテン早く準備しなよ」
ホラ、と手でまくし立てられて、花井は何もいえないで煮詰まったように背中を向けて駆け出した。
超ダセエ!俺が一番ダセー!!!
そんでもって・・・・・・・・・
さんはやっぱすげーオトナだ。畜生、ほんっとダセー。
「」
「あっ・・・まりあ、いつからそこに?」
悪びれるふうもなく、実は気づいていたんじゃないかってくらいわざとらしくふざけたに、百枝はわざとらしくもニコーっと笑った。
「いいねー高校球児。かわいい」
屈託のない笑顔でそう返したに、高校時代もこんな子だったもんなーと百枝は声を出して笑った。
「かわいいでしょ」
「んー、超かわいい」
百枝の可愛いとの可愛いの違いは歴然としていたが、気にするふうもなく百枝はを練習準備に促した。
「ねぇ」
「んー?」
「元気?えーっと・・・ケンちゃんだっけ?」
「元気だよー。超ラブラブ」
「死語」
「死語だねぇ」
<BACK
NEXT>