いつものように練習も残すところ1割、となったとき、篠岡がおにぎりを抱えて目の前に現れる。
そして今日来ているは、両手に牛乳と麦茶を持ってニコニコ笑っていた。
がつがつとおにぎりにかぶりつく高校生たちを見ながら、はおにぎりに牛乳てどうなのかなとか思って篠岡に近づく。
「ねぇ、あれ合うの?」
「んー・・・人それぞれじゃないですかねえ」
なんとも生ぬるい回答を頂戴したは、一番近くにいた巣山に近寄る。当然思春期まっさかりの巣山はあわてふためき、
近くで見ていた花井は、あ、と声にならない声を上げた。
「ちょっとしょーちゃん」
の片手には、ズルして握った自分用のおにぎり(中身は鮭ですごめんなさい)。
「ちょうだい、牛乳」
「え?は?」
「一口でいいからあ」
「なっ、さん自分でくめばいいじゃないッスか!」
「コップ一杯もいらねーんだよーどーせあわないの分かってるんだからあ」
じゃあやんなよ!と花井は泣きそうになる。せめてソコは自分のを・・・いやべつに彼氏じゃないんだけど。何もいえないんですけどね。実際。
田島が自分のコップを差し出そうとした瞬間、まりあがの頭を掴んだ。あ、ヤバイ。振り向く。
?」
「・・・はい」
「・・・・・・・・う・る・さ・い」
ニッコリ微笑む百枝に、はわざとらしいくらいおびえながらゴメンナサイを言った。
















Thank-you Smoking.-----12




































帰りのコンビニにオリーブの車が止まっているのを確認すると、途端に速度が速くなる。
急いでとめて赤い鼻のまま店内に入ると、カゴを持ったがおう、と手を挙げた。
「かいものー?」
「そだよーん」
カゴの中にはあさりのパスタにサラダにナッツにチューハイ。
「いっつも思うんスけど・・・」
泉が一瞬のためらいを見せたあと、呟く。
さんって自炊しないんスか?」
の顔がひきつる。
「・・・いやー忙しくてー」
「なんだよ、りょーりできねぇの!」
「できねーんじゃない!しないの!片付け面倒だし!!」
「あーハイハイ」
「ムッキイイイ!タカちょっと裏来い!」
キャッキャキャッキャとジャレあいはじめた阿部や田島を見ながら、花井はタイミングをうかがっていた。
本当はしゃべりたい。あんなふうに・・・は多分ムリだとしても、少しくらいは。
そんな花井を見抜くように、今日のおやつを選び始めたメンバーから抜けたはコッソリ花井に近づく。
「ふっふっふ・・・花井君」
「・・・なんスか」
途端に顔を赤く染める。面白いくらい分かりやすい。はとっくに花井のツンデレ性には気づいていた。
「待ちうけみしてー」
「や・・・嫌です」
「なんでよー!」
「やですって!」
「あー、もう昨日の待ちうけにしちゃった?どっち?」
どっちって・・・あんな入浴中のを待ちうけにするなんて頭がどうかしてるだろう。俺はアホか!いやアホだけど!
「どっちでもないっす!」
「んじゃ見せろよおお」
「やですって、ちょ、マジさん近すぎっ」
「意識すんなよお〜ほら見せろ!観念しろ!」
「だああああめですって!!」
「分かった、おでん一個おごるし!大根!」
「70円じゃないっすか!ケチくせ!」
「てめええええええ」
あーあ。もーあれだ。しあわせだ。しあわせさんいらっしゃい、涙くんさようなら、もうこなくていいよ。


でももっと贅沢を言うなら
田島も巣山も阿部も、誰も近づけたくは無い。
でももっともっと贅沢を言うなら
みんなが羨ましがるくらい、最高に魅力的なのままで
そんでそうゆうと付き合いたい。
贅沢すぎるな。そう思って自制した。今はこうやってとジャレてるだけでも嬉しい。
都合よく思い返すと、唇の感覚は気づけばもう、言葉だけで感触までもは思い出せない。
手の甲を、ふにゅっと唇に当ててみる。違うんだなー。

おとといから、多少の勘違いも否めないとしても
結構期待とか、しちゃってるんだけど、どうなんだろう。
んー。んんんん。

肉まんは考え事のせいで、店員の間違いでピザまんだったってことに気づくのに相当時間がかかった。




家に帰って風呂に入る。出てくると夕食が用意されていて(今日はカレーです)もぐもぐと妹や母親のぶんくらいは平気で食べる。
食休めにソファでぼーっとしていると、はるかがトタトタと階段を下りてきた。
「ねえ、携帯知らない?」
「あー?しらねーよ」
「部屋にないんだけど。おかーさん知らない?」
「知らないわよ?」
目に映ったのは、テーブルの上に無造作に置かれている兄の携帯。
「ちょっと貸して。鳴らす」
「・・・どーぞ」
当たり前のように兄の携帯に手を伸ばし、メモリを探すのも面倒なので番号を押そうと0に指をつけた瞬間
「あーなにこれ!」
なに?と母親も振り向いた。
「待ちうけチョーカワイイーカッコイイー!どこで撮ったの?だれ??」
やば、と思った。お決まりだが、ここでうまいこと返せない。途端に顔を赤くした兄に違和感を感じつつ、妹はまくし立てる。
「も・・・もらったんだよ!」
「えーいいないいな!あたしの携帯にも送ってよ!」
「ふざけんな」
「いーじゃん、あ、どうせ鳴らすんだからメール送る〜」
そう言うが早いかピクチャフォルダを開きかけた妹から、花井は音速光速反応反射で携帯を奪い取った。
「だああ!!」
「なに??」
「だぁめだっつってんだろ!!バカ!」
「なっ・・・なんでそこまで言われんのよ!バカはそっちでしょ!」
「とにかくダメなんだよ!あすかの携帯使え!っつか家電つかえ!!」
そう吐き捨て、花井は乱暴に階段を上がって部屋のドアを閉めた。
一息ついて、ベッドに寝転び、ピクチャフォルダを開くと、開いた途端に小さなサムネイルはオレンジ色のを表示した。
小さくても、いや、小さいからかもしれないが。とても卑猥に見えるソレに、花井はぐ、と息を飲む。
現れるサムネイルの数は一画面につき9枚。どんなにあがいても最低9枚は追加しなければ、そうだ、いつ携帯を、とくに田島なんかに見られるやも知れぬ。
彼は無言で、天井を9枚連写したのだった。パスワード付きのフォルダがある事を、彼はずっとあとまで知らない。



「ねぇおかーさん」
「なに?」
見つかった携帯でメールを打ちながら話しかける。こうゆうとこ、若い子って器用だなって思う。
花井きく江は夕食の洗い物を全て片付け、りんご食べる?と聞くと娘はうなづくので冷蔵庫に手を伸ばした。
「最近変じゃない?」
「お兄ちゃん?」
「そー」
いくら選択肢が少ないとはいえ、やっぱり一番に候補に上がるのは自分の息子。んん、と顔にシワをよせて、果物ナイフと皿を手にテーブルに座る。
カチャン、となんともいえない音とテレビのCMの流行の歌が部屋を包んだ。
「んー・・・まぁ、ねえ」
スラスラ器用にリンゴの皮が裸になっていく。あ、ウサギにして、と可愛いお願いをされたのだが、それは時既に遅しだった。
「雨の日なのに昨日遅かったし。」
「そうねえ・・・」
「かと思ったら新しい服着てんだよ?買い物でも行ったのかっつーの!」
確かに、腹いっぱい+服を買うお金?そんなの絶対持ってないはず。
「絶対おかしーよ」
「ん〜・・・」
最近の息子を振り返れば、あすかに異論はひとつもない。話しかけても(いつもより)冷たいし、急に顔赤くさせるし。
なんだか、聞いてホシクナイ事が増えたみたい。ショボン。
「もしかしてさあ、好きな人とかできたのかもよ」
面白半分というかネタ半分というか、思春期の娘は想像に身を任せニヤニヤと笑い始める。
きく江は一瞬手を止めたが、動き出したかと思えば声を出して笑った。
「あはは。そんな暇ないでしょー?」
「え?なくないよ!野球ばっかやってるワケじゃないでしょ!?」
「野球ばっかやってるじゃない」
「あのねー・・・授業も学校のイベントもいっぱいあるんだよー?恋愛くらい簡単じゃん」
「そうかしら?」
「そうなの!」
花井梓にとってこの上なく望ましくない会話を繰り広げながら
幸せだと思って眠れる幸せって最高の幸せだな、とか、お気楽極楽ボーイはお花畑に似たベッドで眠りについた。








































































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