世の中には、嫉妬にするが為に心でもないことを言ってしまう事は恋愛ではありがちらしい。
自分に置き換えた場合、さんが「なんですって?合コン?フン!言ってくれば!」というのは
つまりイコール「なによ自分ってものがありながら!いっちゃえばいいのに!・・・う。ウワーン!」だ。
背筋が凍るほどのバカバカしい水谷の茶番劇に、花井梓は絶対ありえない絶望感と
腹が立つほど似ていないモノマネに、涙が出そうになった。
Thank-you Smoking.-----27
赤山に参加人数を伝えた。散々言い合ってジャンケンまで覆して決まったメンバー
自分と、田島と三橋と水谷の4人の名前を告げると
「じゃあ女性メンバーあと2人追加しなきゃね!」といわれ、ゾッとした。
こいつ、まさかとは思うがまさかまさか、まさか自分と赤山とあと1人なんとかって女の子の3人でどうにかする気だったのか?
震え上がり始めた花井をヨソにいそいそと携帯をいじりはじめた彼女をぼーっと見ていると、花井の携帯がメールを受信する。
件名:作戦会議
本文:するからガッコ終わったらファミレス集合。みんなにゆっといてー
決戦は、多分予報と都合からするに、次の土曜日になりそうだ。
目の前に出された黒光りするモノを見て、花井はこれは幻覚だと思いたい気持ちで本日何度目か、泣きそうになった。
そうだ、こんなのありえない。うそに決まってる。いくらなんでもこれはない。俺はきっと疲れているんだ。
若干数名もそんな雰囲気を匂わせていたが、目の前の様はというと薬でも飲ませたくなる程楽しそうで
まったくもって絶望感しか感じない。いっそそっちに連れてってほしい。
「か、カメラ?」
「お、よく分かったねえ〜」
テレビでしか見た事のないような、人差し指くらいの筒からは細いケーブルが約20センチほど伸びており
単三電池が2本入るバッテリーにつながっている。
「これ、鞄に入れてってね」
「は!?」
「苦労したんだよ〜借りてくんの!もう、超!」
ああ、もう薬どころの話じゃない。誰かー!!救急車呼んで!!
花井とは裏腹に、すっげーすっげーを連発しながら田島はカメラを横から下から触りまくっていた。
「鞄ってどうやんの?穴あけんの?」
「や、鞄もったいないじゃんソレ」
こうゆうとこからチョコっと出してくれればいいんだよ。と、自分の化粧ポーチに入れてみせる。
「あ、でも男の子はこうゆうの持たないもんね・・・どうしよっか」
やめりゃいいんじゃないっすかね。花井の気持ちは一向に届かない。
「しゃーない、うちにあるカバン使うか!いっぱいあるし」
俺は恨む。さんにカバンをあげたどこだかわかんない会社を!!
ゆっとくけど安物だからね、と笑い始めたに賛同して笑うお気楽田島と三橋を羨ましくすら思う花井梓。
腰が立たなくなりそうな花井に追い討ちをかけるように、は小さな金色いピンバッジを出してきた。
「・・・なんすかコレ」
「え?マイク」
滅茶苦茶高いから一個しか借りられなかった。花井君つけといて、エリとかに。
事も無げにそう言って段取りを組むに
本当にこの人ってどうゆう性格してんだ、と絶句する。
別に・・・・別に、あの水谷予想の茶番を期待してたわけじゃない。
いや、もう、していた。ああしていたさ。電話から察するに行かせようとしている事は事実だとしても―・・・
「花井君、本気で狙ってってよ」
じゃないとツマンナイから。こんな事ゆってるし。
・・・俺いつから記者になったんだっけ?
この人、彼氏が合コン行くっつーのに何のためらいも無いの?恐ろしいよ!こわいよほんと!
「・・・いいんですか?ほんとに」
それを代弁してくれたのはやっぱり気が利く沖で。いやでももしかして、聞いてくれないほうがマシだったかも・・なんて結果論だよなああああ。
「セックスまで行けたら100万やるよ」
そうニヤついたに、花井は肩をボトンと床に落として掃除機で回収されたような気持ちになった。
いくらさんでも冗談が過ぎるんじゃないかなーなんて栄口が思ってみても。
相変わらずタバコをふかすの横顔は、何も変わらない。
「アレさあ・・・マジなのかな」
チャリを押しながらモヤモヤした感情をぶつけられたのは水谷で、いや、正直
この気持ちを拭ってくれるなら誰でもいいと吐いた花井の言葉を聞き取れたのがたまたま真横にいた水谷ってだけで。
彼は額にダラダラ汗を流しながら、ああ、あの茶番劇の頃が懐かしいと老けた目で遠くを煽った。
何て言ったらいいのか分からない。だって、どうしろっつーんだ。
さんがあんなツマンナイ冗談、もしくはカマかけをするとはどうにも思えなかった。
2人の仲が非常にうまくいってないなら「ヤケ」で話はつくが
そうゆうわけじゃないのもよく知ってる。さんは今度の記事に困り果ててるのも、こないだ目の当たりにした。
さんの仕事で、もし自分たちが力になれるんだったら、俺だって花井だって多分いくらでも頑張れるよ。
でも・・・セックスって、それって、俺はしたことないけど、大事なものじゃないのかなあ。
だって花井、あんな顔真っ赤にしてた。
2月15日の事が、ありありと思い出されてしまって水谷はすごく複雑な気持ちになる。
本当に好きな人にあんなん言われたら、俺ならきっと泣いちゃうかもな。
正直、あの言葉の意味が本気か冗談かなんか自分達には分からない。わかりっこない。
だってさんは俺らより7年分多くウソをついて、7年分多く冗談を交わしているんだから。
「・・・わかんないね」
「・・・んー」
自転車を押す手には、全然力が入らなかった。
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