男の子は女の子のやわらかいところが好きなんですよ。
変にゴツゴツしてなくて…ほら、コーラの瓶だって女性のボディーラインを象った途端売れ始めたって…
そんな、すっかり大人になってしまったジャニーズの人がテレビの中でそう言って
俺はそん時、ああそんなモンかねって思った。
今なら言える。こんなん自信持って言うのもどうかと思うけど
好きなんじゃない。
男は女に弱いんだ。
Thank-you Smoking.-----29
余計な感情に囚われてやけに熱の入った花井のラブソングが終り、水谷が若干「これってさんに向けて歌ってんのかな」
なんて気付かなくても良いとこに気付いたりして。
チラリと花井を見やると、隣でさあやが感動にひたりまくっているのが見えて
ああなんていうか。この子には死ぬほど申し訳ないだなんて、余計な御世話。
手持ちぶさたでサイダーを飲むと、赤山が次の曲を入れていた。ムーミンやアコはまだ歌わないらしい。
「アレ歌って!」
さっきからパソコンを見向きもしないに痺れたように、阿部は「目的どうしたんすか」と忠告してみたが
「帰って全部確認するー」
とマイク越しに言われた。
いやそうゆう事言ってんじゃなくて。
さんがやめろっつったらいつでもアイツら解散しますよ。
俺らだって男子ですよ。しかも至って健康な。
なんかの間違いでセックスなんかしちゃったら
それこそリアル過ぎて使い物にならんと思うわけですよ…俺は。
まあカラオケで乱交はいくらなんでもエロビデオの見すぎ。ないない、と考えを自重した。
そんな阿部の心配をヨソに、はバリバリの青春ロックバンドを歌い始めたりして
あー
普通にカラオケ来てんだったらこんな面白い事無いのに。
誰が誰といい雰囲気だという事もなく
というか、多分これはまだ憶測に過ぎないが
もしかしたら
この中で誰が誰をって、さあやが花井を、しかないんじゃ?
奇しくも同時刻気付いてしまった水谷と栄口が、違う部屋にも関わらず同じように頭を抱えた。
例えばさんが本当に世界一完璧な女性だとしても
高校一年生がそれにどれだけ価値を見出だせるなんかたかが知れていて
増して花井みたいに初めての彼女がさんじゃあ
一種のトラウマのように、変な女にハマっちゃうっていうか・・・・
ほらだって、SMとかスカトロとかにハマんのもそうゆうトラウマって言うじゃないですか。
なんていえばいいのか分からないけど
さんはやっぱ、トシ関係なく最高で。
できればずっと、キャプテンの彼女でいて欲しい。
しこたま歌いきると、さあやがお手洗いとポツリと告げて何故か携帯を持って部屋を出た。
待ってましたといわんばかりで、赤山も一緒に行くと席を立つ。
残されたアコとムーミンともちろん会話がはずむワケもなく、ただただすっかり水になってしまったジュースがノドを通るばかりで。
ちらりとさりげなく腕時計を見た水谷にうつる時刻は午後5時45分。そろそろお開きかな、ああ今日はオツカレサマ、俺。
そんなふうにぼやーっと妙な達成感に浸っていたら
突如ドアが開き、赤山がVサインを出して満面の笑み。
人の満面の笑みを見て嫌な予感しか浮かばないなんて、嫌な現象だ。
「これからさあやん家いきまーす!」
「「「「は???」」」」
うちのお父さんとお母さん、今旅行に行ってて誰もいなくて。
夜1人じゃ怖いし、最近うちの近くチカンが多くて・・・・
「っていうかマジさあやんちナカヨシー!」
夕暮れの電車に揺られながら、車両まるごと聞こえる声で赤山が笑う。
「あはは・・・」
社交辞令で笑った水谷は、なぜかアコにぱしっと肩を叩かれた。
そんな音声は、電波圏内にはとっくにいない監視組には当然届くはずも無くて。
「ど、どういう事??」
「まずいんじゃね?」
「いやっ・・・誰かさあやの家しらねぇの?」
「知るわけねーじゃん」
完全に乱交的な想像しかつかなくなって制御不能になった思春期男子のパニックを見て
天下の様はタバコをふかしながらケラケラと笑った、車の中。
「まーいーよ、コーちゃん駅だけでも聞いといてくれる?」
「あ、は、はい」
急いでメールを送ると、助けを求めるが如く信じ難い速さで返事が来る。
たった漢字3文字だけの短いメールには、学校の最寄り駅からは一駅しかはなれてない駅名が寂しそうに並んでいた。
「んじゃあいっきますかー。」
のん気にそう言うと、カギをひねってエンジンをかける。
それでも不安そうな思春期達の頭をぜーんぶ撫でてあげたい気持ちをおさえて、はタバコをモミ消して。
「そんななんもなるわけないじゃん。したってセックスくらいのモンだって」
いやいやいやいや!!それがマズいんですってヴァ!!
キャッキャキャッキャとはしゃぐテンションについていけないテンションも空しく、電車は至って順調にさあやの家の駅まで到着。
電車がストップする時の独特の機械音までもが嫌な予感を駆り立てる。
すまい、すまいと我慢していた花井だったが
ヘタレでも何でもござれと、目を盗んでにメールを打つ。
件名:無題
本文:いいんすか?
もしもっと素直に、行きたくないと言えたら
それでもさんは無敵スマイルで行けと命じるだろう。
いやいくらなんでも行きたくない相手に無理矢理…ああでも。
「花井君?」
ハッとなり顔を上げると、階段の二段上からさあやが心配そうに花井を見つめていて。
何でもない、と返した花井の携帯が、鳴る事は無い。
「あ、そこのコンビニ曲がったー…あ!そこです多分、あの青い屋根!」
水谷のここをこう曲がってどうのこうのみたいな文字ナビゲーションは人類稀に見るくらい分かりにくく
監視組は駅からものの10数分のさあやの家まで車で40分を費やすハメになったのだが
この際誰がふみきを攻められよう。
時刻は6時50分。あたりはすっかり、暗い。
「今ピザ屋入った家?」
「あ、そーです!」
「んだよアイツら、ピザとか豪勢だな」
は丁度良い距離に車をゆっくり止める。
さあやの家は中途半端な田舎にしてはなかなか大きく、洋風の可愛らしいお家だった。
何台か路上駐車のファミリーカーがあるから、停めたってごく自然に目立つ事も不信な事も無い。
完全にエンジンをとめたが運転席から後ろに入り込み、助手席の泉もそれに続く。
少しせまい後ろの6人乗り部分に収まった5名の監視役は、一様にパソコンを見やる。
ひさびさに電源を入れると、イヤホンを抜いた途端ものすごい笑い声が聞こえて来た。
「うるせっ」
阿部がそう言うと、全く同感のが音量をギリギリまで下げる。
四つの画像はノイズ混じりだが見るには充分で相変わらず田島のカメラは真っ黒。
すっかりリラックスした面々がそれぞれ3方向から写し出され
水谷のカメラがドアからピザを持って現れたさあやとアコを映す。
『すげーうまそうっ』
田島と思わしき腕が花井のカメラの前を横切り、三橋のカメラに写っている花井の横にはさあや。
どうやら聞こえづらい会話の内容からするとこのピザのスポンサーはさあやの両親らしい。
しかし、こんな感じでお金を使われるとは夢にも思っていなかっただろう。
よく見えないがジュースと思わしき缶で乾杯をしてそれぞれが談笑に入る。
「あー…腹減った」
ポツリと呟いた浜田に、泉がニンマリ笑う。
「さん、コイツ飯買いに行ってくれるらしーですよ」
は一瞬の間のあと、泉と同じようにまたニンマリ笑った。
「悪いねぇ…」
「ちょ、なんで俺…」
「わたし、あまいパンが食べたいわ。あとあまいこーしー」
「さんっ!え?」
「あーじゃあ俺…カップ麺とお茶と…なんか適当に」
「阿部、しょうがねーみたいな感じでサラリと言ってんじゃないよ!」
「浜田さん、俺なんでもいいですから」
「ちょ、栄口まで!」
「浜田、クジあったらやってきて。カスだったら殺す」
「デエェえ!?一回500円もすんのにぃィー!?」
哀れ浜田、つまみ出されるように車から追い出され見上げた夜空まで泣きそうで、そう言えば今夜は雨だとどこかで聞いた。
「あ、お金渡すの忘れた!」
「いーっすよ、アイツ稼いでますから」
けろりと言ってのけた泉に、は一瞬キョトーンとする。
そして、クスッと笑った。
「どうしたんですか?」
丁度後ろにいた栄口に、振り返って見た事もないような、ほんとドキッとするようなふんわり笑顔で
「いや、男の子におごってもらうとか、久々だな。」
そう照れくさそうにした。
ちょ、さん。さん!?
その顔反則!浜田カワイソッ!いや、俺ら以外見てない世界中全員 カワイソッ!
超絶可愛い顔にノックアウトされた栄口と阿部と泉の余韻はひたる間もなく
「ねー、今まで何人と付き合ったことある?」
そんな生々しい会話に引き裂かれた。
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