只今
完全に自分のあるべき回路を失いました。どうぞ。
Thank-you Smoking.-----31
けたたましい音がして、フワフワしっぱなし水谷が目をパチクリさせる。
「なにー?」
そう言っていつの間にか水谷に寄り添っていた赤山が彼から離れ、ドアノブを捻ろうとした瞬間
外側に引っ張られて赤山は見事に転び次いで出た悲鳴に田島が起きて目をこすると
金髪ボブ女が今にも泣きそうな顔で立っていた。
「あ、!」
「・・・?」
不信感と心当たりで見上げると、彼女は赤山をまたいで一番近くにいた田島に詰め寄る。
「ユー!花井君は?」
「え?うわ、なんでいねーの?」
今現状を把握したらしい田島がキョロキョロする。まったくもう、寝てんじゃないわよバカ!
あんだけ聞いといても見といても嘘であって欲しかったなんてバカバカしくて笑える。
はとっさに廊下に出ると、今度は玄関から残りの監視組がわらわら入って来た。
「ちょ、え??誰?」
「さん、何してんスか!」
「酒くせ!オイ田島!」
「泉〜」
「・・・・タカ」
「はい?」
「みんな運んどいて」
「え?」
「もー中止」
子供みたいにそう言うと手すりを思いっきり掴んで引っ張るようには階段をかけ上がった。
これが若さの恋心ってやつだと思う。だって、お酒を飲んだら多少のオイタは許されると
テレビでも友達の話でも聞いている。
べつに正気を失ったってわけじゃない。でも、だけど。好きになってくれなくても、彼女がいてもいい。
セックスしたい。好きな人とのセックスなら、たとえ相手が自分を好きじゃなくてもいい。
そんな暴走した乙女は、最近彼女にゾッコンラブで手もつけられない花井に詰め寄る。
「あたし、ほんとに諦めるから」
「いや・・・そうゆう問題じゃなくて」
太い腕にしがみついてくる、さあやの小さな胸の柔らかみを感じる。
自信がある。がいなきゃ、きっと今頃とっくにその胸は自分の手のひらの中でカタチを変えているだろう。
でも、現実は、信じられないくらいは自分の中で大きく肥大していて
まるまる太った恋愛感情は、文字通り息もできないほど花井を押しつぶして・・・切なくて苦しくて幸せで。
花井にとってそれを失うリスクを思うと、悪魔に命売り渡してもいいって言っても言いすぎじゃなかった。
「おねがい。ねぇ、おねがい」
「しねーって!」
「してくんないならずっと付け回す!」
「だからっ・・・」
もみ合う二人の時間を止めるように。
でかい足音がこっちに向かって来て、勢いよくドアをあける。
息の上がった赤い顔に、ポタポタ髪から落ちる水の滴が月明りに異様に綺麗で
ああ、さんだ。俺の。そんな下らない思いで頭が一杯になった。
「はないくん」
今大事なのは
彼女が乗り込んできた事による焦りでも
自分の名前を呼んでいる声でもなくて
あのが
まるで子供のように泣いているって事で
その真ん丸の目は
自分だけを見てるって事で。
「はないくん」
「・・・はい」
「あたしとまたセックスしたい?」
不安と自信が交ざりあって完全にミックスされまくった表情は
ああもうなんつーか最高最大愛しくて
どうしろっていうんですか。もーこれ以上好きになったら死ぬかもしれませんよ、俺。
緩んださあやの手を振りほどくと
ほらまたこないだみたいに
「した過ぎます。」
どこまでも引っ張ってくれそうな細い腕が花井を引きずり込んで夢中にしてしまう。
まるで転がり落ちるように階段をかけ下がると、あけっぱなしのドアから浜田が三橋をおんぶしているのが見えて。
靴をもどかしく履くと急いで車に乗り込み、逃げるように車を発進させた。
気の利く栄口が自販機で水を買って来ていて、慣れた手つきで浜田が飲酒に漬ったバカな三人を介抱している。
唯一それだけはと飲酒を拒み続けたらしい花井は流れ上助手席に座っていて
すぐ横でがなんだか難し過ぎる表情でアクセルを踏んでいた。
「ほら三橋、水飲め」
「浜田ーハンカチこっちにも貸して〜」
「田島起きろよいい加減!」
「水谷死んでんぞー」
「さん、こいつら今家に返すのやばいっすよ」
「確かに・・・親には見せらんねーな」
「さん」
「さん?」
「あっ・・・」
丁度信号が赤になり、車がゆっくり止まる。
彼女が今どれだけ恥ずかしい事を言おうとしているか
メンバーどころか、本人ですら予想なんか出来なかっただろう。
「あたしっ・・・」
まるで一番大事な事を思い出したような表情は
花井を真直ぐ見ていた。
やわらかい頬で、信号機の赤がさらに赤みを帯びる。
「嫉妬出来るんだ・・・花井君絡みに」
散々溜め込んで吐かれたそれは超絶赤面モノなのに
当の本人が死ぬほどびっくりしてるモンだから、何故か花井の顔が限界突破して真っ赤になった。
「なっ・・・」
「だっ、だって!」
「いや・・・さん」
「え?もー何これ?マジ?」
「っ・・・いやあの・・・っ」
「・・・」
後部座席の全員が
恋人同士の珍妙な会話に言葉を失う。
「・・・ばっかみてぇ」
阿部が心底呆れて吐いた言葉に合わせるように、信号が変わって
は帰る道々
「阿部の家で遊んでてチューハイとジュースを間違えた」
という今時ありえなさ過ぎるクソみたいな言い訳を考えた。
全員それはねーよと思いながら、だからと言って頭が足りないのはもう全員一緒で
投げやりに納得したメンバーをそれぞれ家まで丁寧に送って、レンタカーを返しに行き
こうして長過ぎる一日が終わり
は次の日、雨と精神的事情により高熱を出した。
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