あーこれ何に似てるんだっけ。
あ、そうだ、前パティシエのなんたらって番組で見たやつ。
ドロッドロの飴の糸ひきながら、しゃあああああって木ベラ振って
そしたら鳥の巣みたいな飴が出来て、しかもやわらかいうちに手でカタチとか変えられちゃって。
あれ簡単そうだったけど、実際難しそうだな。っていうかあんなの美味しいのかなあ。
あたしあんまそのヘンは器用じゃないからなー・・・あ、花井君とかできそうだな。
しかしあれだね。また天気良すぎるでしょ、今日。
















Thank-you Smoking.-----37
























目の前に並ぶのは、プリンのカラメルソースとべっ甲飴とベイクドチーズケーキと・・・
「レモンスカッシュ、だな」
「へ?」
素っ頓狂な返事をして見せた浜田に、はカラカラ笑う。
春休みを迎えて練習試合を終えて、3日経って遊びにきたら連絡違い。

『なんで誰もいないの?』
『う?あっ?』
『俺ちょっと花井に連絡してみる・・・・』
『まさかなんか事故じゃないよねえ?』
『そんなっ・・・』
『わー三橋泣くな!あるわけないじゃんそんなん!』
『もしもし花井?え?なんでまだ寝てんの?あ?ま、まじでえ!?』
『え、なになに?』
『いや・・・今日昼からだろって、言われた・・・』
『えー!!』
そんなやりとりが行われたことは、だいたい想像がついたりしちゃう。
最初はキャッチボールなんかやって遊んでたんだけど、ついウトウト眠りについてしまって

にやにやしながら覗き込んだグラウンドには、三橋と栄口と水谷と浜田が居て―・・・
「しっかし、閑散としてますなあ」
「まあ・・・そうっすね」
歯切れも悪くそう答えて、浜田はどうしようかとモジモジしているのが様にはお見通しなわけで。
どうやら今日の練習が午後からになったという連絡網が、どうにもこうにもうまいこと回らなかったらしい。
「多分フミキがチョン切ったんだろうなあ・・・そのメール」
「あー、ありえますね」
ちょい失礼なことを言って笑った浜田に、気持ちいい風がそよぐ。
たまには顔を出そうかと三橋に時間を聞いて来た浜田も、この意味もないヒマを持て余す事になったのだが
あんまそこは、気にしてないようだった。
「今日はバイトないの?」
「あー、昼からですね」
「じゃあ練習参加できないじゃん」
あはは、と笑ったに浜田の顔がほころぶ。練習なんかできなくても、こうやってさんとしゃべってられるならラッキー。俺ラッキィ。
ふんわり漂うタバコの匂いに目をつむる、グラウンドわきの小さなベンチ。の下の地べた。
このまま昼までしゃべってよーか、とベンチに座っている浜田に適当にぬかすと、意外といい返事をくれたのが10分前。
「ハマちゃんさー、レモンスカッシュ飲んだことある?」
「はい?」
「レモンスカッシュー」
そう言えばないかもしれませんね。そう呟いた浜田に、は目を見開いた。
「まじかよ、ジェネレーションギャップだなそれ」
「いや、作ったりとかしてましたけど」
喫茶店のバイトで。レモン果汁にソーダ水に、お好みでシロップ。
「あれうまいんだよ。なんか、昔の喫茶店って感じがして好き」
でもあいにく、あんますっぱいものはタバコにあわなくってさ。ついコーヒー頼んじゃうんだよね〜最近。
まったくもってとりとめのない話だなあ、とボンヤリ思いながら。
「なんで急にレモンスカッシュの話?」
「え?いやー・・・ハマちゃんレスカに似てるなーとか思ってさあ」
何故か変な顔を見せたに、驚きながら浜田は笑った。
「はは、どこがですか」
「髪の毛。それブリーチ?」
「はい」
そういえば、今朝見たらちょっと黒いの出てきてたよなあ。そんな事思い出して、まぁいちいち気にしててもしょうがないんだけど、とか考えたり。
「ハゲるよ」
「あー、よく言われます」
「花井君みたいになっちゃうぜ」
「花井はハゲじゃないっしょ」
「ははは」
ふと、さっきからヒザというかモモの上で寝息を立てている水谷が「んごっ」と寝息(みたいなもの)を立てた。
はプッと噴出したかと思うと、ごく自然に、風に揺れる水谷の髪を撫でる。
「これも人工だよね」
「あー、みたいっすよ。」
「こっちは?」
指差すもう片一方のモモの上には、三橋が気持ちよさそうに眠っている。
「そっちは天然っす。昔っからそうだったんで」
「だよねー黒いの出てないもんね。すげー、ウラヤマシー」
そう言って今度はそっちを愛で始めたの黒い髪の毛が、サラサラ揺れる。

地べたに両脇に膝枕。もたれるベンチのちょうど首のあたりでは、唯一ベンチ上で寝ている栄口が今にもの後頭部にキッスーな距離で寝息を立てている。

「ユートピアの髪は?」
「さあ?いやでも人工でしょ」
「しかし結構、そろいもそろったもんだねえ」
「え?」
いや、茶髪組がさ。そう言うと、またクスクス笑い始めた。浜田はつられて笑う。

ふと途切れた会話に、その間に、チラリとを見てみると
ベンチに座っている自分からじゃとてもじゃないが分からない。けど、きっと気持ちよさそうにニンマリしているんだろう。
浜田はダサいの承知で、そっと口を開く。

さんはー」
「んー?」
「花井のドコが好きなんすか?」
ふふっと肩が揺れる。あれ?なんか変な事聞いた?
「なんか最近その手の質問多い気がする」
「え?そうなんスか?」
「いやーまあべつにいいけど」
くるりと、ベンチに座る浜田に首だけで振り返って。ほぼ横顔のさんの顔は、なる程、みんな夢中になるワケね。
自分だけ時差のあるへの関係を埋めたい、とか、そんなありありとした欲求じゃないんだけど
まあありていに言えばそうゆう事にもなるかな。
珍しく、俺とだけさんとしゃべってるわけだし。
「どこって言われてもねえ」
「無いんスか」
「無い・・・って、ひどいな」
言葉に反して彼女は笑っていて、ちょっとだけ、表情が違くみえて。
ああ、もしかしてその顔って、花井の事考えてる顔っすか。そんなふうに思うと、なんか胸のあたりがキュンとする。
あんな強くて、優しくてかっこよくて、でも誰かの彼女なんだ。すげーなあ、人間って。っていうか、果てしないな、さんって。
「これさあ」
「はい」
「花井君には言わないでくれる?」
「はい」
「                       」



















「ちょ、さん!?」
見上げると、花井が真っ赤な顔をしていた。
「おーコンニチワ」
「な、何?ひざまくらっ??」
「おっそいよ花井君ー」
は??は??と眉をゆがめる花井の声に、水谷と栄口が起き上がって・・・
彼と同じく、顔を真っ赤にさせた。
「な!!さん、いつから??」
「え??え??」
うふふー、と悪戯に笑うに、三橋はまだ夢の中。
「だあって、地べたで寝てるんだもの」
俺、さんに膝枕してもらっちゃった???幸福感に酔いしれる水谷に、ベンチの上で寝たことを非常に後悔する栄口。
しかし彼は彼でまた羨ましいシチュエーションだったわけで。
そういえば鼻先くぐられる夢見てた・・・あれってさんの後ろ髪?ひゃあああああもー飛べる!栄口号飛べます!
「そっ・・・・」
そんなん俺でもやってもらったことねぇのに!!!!花井の言葉は色々諸事情によりふわーっと空に吸い込まれる。
うろたえる花井に、何て分かりやすいんだろうと笑いながらはゆっくり三橋を起こした。
「お前ら寝ててよかったなー」
笑う浜田に、3人はいやいやとかなんとか言いながらも幸せを隠せない。

まあ俺も
お前らが寝てくれてたおかげで、さんの秘密知っちゃったんだけどね。




あとから来た阿部やら田島に、水谷は得意げに先ほどの事を話すと
ずっきーずっきーと田島に攻められ、一時部内はのモモという壮絶なるものをめぐっててんやわんやで。

そろそろ準備を始める、となった暁に、隣に並んでいた花井をふと見上げて
は一瞬眉をゆがめた。
「・・・何すか?」
「花井君・・・・・・・背ぇ伸びたんじゃない?」



じゃあ俺バイトあるんで、とそそくさと帰り道へ足を踏み出した浜田は
みんなが見えなくなってから、ふう、と息をついた。



『なんか背ぇ高い人に弱いみたいよ』

のその言葉を思い出す。
だったら先に俺が出会ってればなーなんて考えちゃったことは、どころか誰にだって内緒だ。
「あー、んでもい〜ひと時を過ごせた!」
んーっと背伸びして、今日、レモン果汁とソーダ水とシロップ、買って帰ろうと決めたりして。
あ、チェリーも忘れないように。











「花井君は黒ゴマプリンみたいね」
「は???」





































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