生憎の小雨、春休み最終日。
春休みって課題もなくてなんて素晴らしいんだ、と晴々とした顔で言った水谷を思い出す。
ここへ来る途中、指定の本屋で2年生の教科書を買って来た。なかなか機嫌がいいので紙袋の重さもどこか心地いい。
花井がなんとなくめくる前に
持ち主より先に、手を伸ばしたのはで。
憧れの膝枕で、再生された全く知らないオムニバス形式の映画をだらだら見ている。
あー
しやわせだ。















Thank-you Smoking.-----38




















ペラペラと頭上で捲られる真新しい教科書の音が耳をくすぐっては消えていく。
「うわーもーぜんっぜんわかんないわ」
現国の教科書を花井の腹に置くと、はタバコに手を伸ばした。
今日ひっさしぶりにの部屋に来て一番驚いたのは・・・すごく近い距離で静かに仕事中の、空気清浄器。
俺の為に買ってくれたんかなーとか思うと、いても立ってもいられないくらいこそばゆい。
まぁそんな事聞くほどダサくねーし。いやダサいんだけどね実際。
映画から目をそらして、頭を真上に向けると
マジで真上でタバコに火をつけるがいて、あ、さんの鼻の穴初めてこんなに見たかも。そんなくっだらない事を考えた。
「なに」
クスクス笑うが銜え煙草で手を伸ばす、腹の上の英語の教科書。
「いや別に・・・」
「顔面に灰降って来るよ」
「うわ」
素直に横を向いた花井にニヤニヤしながら、部屋は映画から流れる英語に満たされる。
ぺら、と音がして微かにタバコの匂いがして
花井は幸福感で久し振りに空も飛べそうだ。

「ねー花井君」
「はい」
「花井君はどの科目が一番好きなの?」
「んー・・・英語っすかね」
え、と意外そうな顔をされた。実際見たわけじゃないが。
「なに、英語好き?」
「まー」
ちらりと見ると、は花井に覆いかぶさるように腰をかがめる。
一瞬小ぶりなおっぱいが顔にかぶさってきて焦ったのもつかの間、何のことは無い、テーブルの上の灰皿にタバコを押し付けただけ。
「あたし英語はすっごいダメだったなー」
サヨナラしたの胸のぬくもりに未練タラタラ。
そういえば俺とさんって、まだセックスって2回しかしてないんだよなあ。あーん。
「でもよく海外行ってんじゃないっすか」
「いやー・・・まあ、ぶっちゃけかなり苦労してるよ」
だいじなのよーほんと、言葉ってさ。そんなふうに苦笑する、の髪を撫でると
彼女は気持ちよさそうに、ほんわかと笑う。

いつも思うんだ。
ケタケタ笑ったりカラカラ笑ったり、かと思ったらニヤニヤしたりふんわり笑ったり、クスクス笑ったり。
さん。まだ、俺の見た事無い笑い方、持ってるんスか?
俺、それ生きてる間に全部見れますかね。出来れば見たいんスけど。
それってプロポーズじゃん。そんな事にはっと気づくと、たちまち「自分どこまでのぼせりゃ気が済むんだ」と顔を赤くした。

「でも俺、海外行ったことないっすよ」
の髪を指で梳くと、しゅるしゅると乾いた音がする。雨音と饒舌な英語と重なって、それはどこかの名曲みたいだった。
「じゃあどこ行ってみたい?」
「んー・・・オーストラリアとか?」
「あー、花井君ってカンガルーに似てるよね」
「こないだ黒ゴマプリンとか言ってなかったでしたっけ・・・」
「黒ゴマカンガループリン」
「きもっ」
ふふふ、と笑う。花井も素直にニヤニヤ笑う。
あーあふれそう。幸せであふれそう。俺もー、ぶっちゃけ泣けそうなんスけど、さん。
どうしてくれるんスか。俺こんなんなっちゃいましたけど。
もーなんか
他の子とか、ほんっとありえねー。



投げ出した体にさんが落ちてきて
久しぶりのキスをすると、がう、とふざけて唇をやんわり噛まれた。
んなことしたらやっちゃいますよ。っつかわかってんでしょ、もーほんっと、俺の下半身は素直すぎる。
「んっー」
そろそろおっぱいを触ると、くすぐったそうに眉をゆがめてが笑う。
花井はその小さな顔をめいっぱいひきよせて深い口付けをすると、上でがまた笑った。
「ベッド行く?」
「やー・・・ヨユーないかも、です」
「了解」

ベッドじゃないってだけで興奮するんだって、俺ほんっとばっかみたい。
首筋にキスをしたおかえしにドロッドロの甘い吐息が耳にかかってきて、俺は久しぶりにまたあーもう溶けちゃいたいって感覚に脳がクラクラする。
ゆっくりまくりあげた長袖Tシャツの下、さんの胸ではさっき見た映画で女の子が着てたような花柄が咲き誇っている。
ごめんな、じっくり見てあげたいけど。多分女の子の下着って、じっくり見る為に作られてるんだと思うんだけど。
今の俺の用は、君が隠してるモンなんだ。

ブラジャーのホックを片手で外すと、がぎゅっとしがみついてくる。
花井はそんなこともいちいち嬉しくて、ぶっちゃけ今にも全部ひっぺがしてしまいたい衝動を抑えまくって抱き返した。
「はないくん」
「・・・はい」
その瞬間、無理やり2人で乗っかっていたソファから長い足と教科書がズルリと音を立てて落ちる。
「なんか、やっぱ、背ぇ伸びた気がする」
そういいながら花井に手を伸ばし頭に巻いてあるタオルをとると、そっとオデコにキスをした。
愛しくて苦しくて、どうにかなりそうで。
花井はをソファに座らせて、自分は床にヒザをついての足の間に割り込む。
そんなエロい顔で見下ろされるのも結構いいもんだなーとか、ちょっと意外だったりして。
そのままの体制での上半身を裸にすると、少しだけ照れくさそうな顔が見える。
まだ時間は午後2時過ぎ。でも、とりたてて照明もつけてないこの部屋は、少しだけ暗い。
ジーンズのボタンを外しながらサコツにキスをすると、またぎゅっと抱き寄せられて
さんの胸の中で死ねたらどんだけいいか、くらいバカ丸出しな事だって考えちゃう。

だってもう、好きすぎる。
大好き、超好き、むっちゃくちゃ愛してる。
うん、愛してる。もっと上があるなら教えてくれよ。ほんっと、まじで教えて。

さん」
せっぱつまった顔で見上げられて、は胸の鼓動を感じて、ごまかすように花井にバンザイをさせてロンTをはぎとった。
きれいな体。少年っぽいけど、筋肉ついてて、しまってて、力強くて。
素肌が触れ合った瞬間、ちょっとだけ何故か涙が出そうになった。
「花井君・・・もー、どうしよ」
「へ?」
「もー・・・どーにかなりそー」
気ぃ狂いそう。好きって感情で、頭パンクしそうなんだけど。
その苦笑に似た笑顔に、花井は心底甘くてどうしようもない感情をただただキスにした。

「俺のほーがどーにかなりそーっす」
「う、うそだあ」
「マジですって」
「絶対あたしほどじゃないもん」
「いや、ぜってー負けないと思いますよ」
阿部が聞いたらデコにでも血管走らせてしまうくらいくだらない会話。ああくだらない。くだらなすぎて、もーほんっと・・・どーしよ。
ジーンズにショーツがひっついてきて、もうめんどくさいから全部いっきにひっぺがす。
内腿に手を這わせると、せつない声が土砂降りで。
「んっーもおおー」
「おあ、濡れてる」
「だからなんでっ・・・あっ・・」
ずぶずぶ中指が吸い込まれる。ほんとは色々したいけど、とにかく今余裕がなくって。
「ちょ、んっ・・・んー!」
「あーもー・・・」
音を立てて指を抜くと、花井は自分のズボンのファスナーをおろして、ペニスだけをあらわにした。

薄暗い光の中で、自分の目の前には胸を裂くほど大好きな人がいて。
なんだか目だけは子犬みたいに、どうしようもなく切なくさせる顔をしていて
「ほんっと申し訳ないんスけど・・・挿れたい」
だってさ。まじで、ほんっと、最大級のバカ。そんで、最大級、愛しい。

「はっやいよ・・・」
その顔は笑っていて、手はソファのスキマからコンドーム探り当ててて。
「仕込んどいたんすか」
「もしものときのためにー」
ほんとはね、花井君とセックスしたくてたまんなかったんだよー。
そんなんちょっと可愛すぎるでしょさん。
俺の、さん。

ゴムの匂いが鼻をついて、がゆっくりと花井のペニスにゴムをすべりおろす。
はあ、と息をついてちゃんと装着できている感覚を確かめてから
花井はゆっくり、入り口にあてがった。
ひさしぶりですね。元気でしたか。あーくそ、バカにも程があんだろ、俺。

「ンー・・・!!」
「っ・・・」
腰を押し込むと、飲み込まれていく。はあ、と息をついて埋まった感触を確かめると
ほんっと今にも出ちゃいそうでマズい。
「あっ・・・あっ」
花井の気苦労も知れず、の中はぎゅうぎゅうと締め付ける。
さんっ、も、ちょっと、しめんなっって」
「わざと、じゃないんだけど、ごめっ・・・」
だって気持ちいいんだもん。花井君でいっぱいになって、もーなにこれ、なにこれ?あたしこれじゃ女の子みたいじゃん、まじで。
自分がどれほど気色悪い顔をしているかはわかっていたので、両手で覆い隠していたのだが
ずん、と花井の腰が打ち付けられて背中を反らせた瞬間、手が強引にひっぱられる。
真っ暗の次に見えたのは、汗をかく坊主頭の花井。
「・・・さん」
「・・・もー、なに」
「・・・今日はいっぱいしてもいーですか」
真っ赤な顔で言うかね、ほんっとにこいつ。ほんっとにもう!!もう!!!

「・・・そだね」
ちょっとだけ困った顔が尚更殊更かわいいなんて。
もー、俺泣いちゃいますよ。まじで。




「あっあっ、んゃあっ」
「っ・・・!・・・ぁ」
「あ・・ずさ、もっ・・・だめっ」
「・・・



目が覚めたら、自分の携帯が19時を刻んでいてちょっと焦って。
いつの間にか床でコトに及んでいたらしく、花井はいつの間にかかぶっていたソファにかけてあったブランケットのぬるさに現実失いそうになる。
「あ、起きたー」
「あ」
花井にしがみつかれたまま、は立て肘で英語の教科書をめくっている。
スベスベの感覚に自然と撫でた背中が震えて、あー背中にもキスしたいなって思った。
「・・・なにしてんすか」
「んー?ベンキョー」
うそばっか。笑うと、見抜かれたみたいにが変な顔をしてみせる。
「ほんとは何してたんすか」
「んー?んーヒミツ」
そう言い、パタンと教科書を閉じて
はモゾモゾとブランケットの中に戻って、ぎゅっと花井に抱きついた。
抱き返して髪を撫でる。やけにちゃんと目が覚めてしまって、花井はとりあえずもう少しだけ、この幸せを味わおうと
ひたすらの頭を撫でては、とりとめのない話を聞いた。

「でねー花井君」
「はい」
胸の中で、が花井を見上げる。
目があったかと思うと、瞬間、アゴに短いキスをされて。
「英語がんばんなよ」
「・・・何すかソレ」
「ふふふふー。なんでもねー」
花井君連れて海外旅行。んー、まじ最高かも。まだ言わないけど。

あーもー幸せすぎて。このままここにずっといたいなあ・・・なんてプワーンとした夢は
「さて!起きるか!」
突如切り替わった彼女のテンションヌに、打ち砕かれる。
「明日っから2年生でしょ!」
「・・・さん」
「ん?・・・・・・・・・わああああああああ」

抱きしめられるというよりは。
羽交い絞めにされたは、花井のなんの予兆も無いハイテンションにより
胸にドス黒いキスマークをつけられた。


「・・・ちくしょう」
「さー、帰るか〜」












2年生になってはじめての英語の授業で教科書をめくったとき
花井の第一ページ目、お決まりの簡素なキャラクターは赤ペンの鼻血を流々と流している事を知るのは
もちょっと先の話になる。




さん、ラクガキしないで下さいよ!』

『愛情表現だよあれは』









































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