うわーやっばあ・・・むっちゃ眠たい。
おもたーいおもたーい瞼がいっきに攻め入ってくる。ああもうここの結界はすぐに崩れ去る予感満々の自信満々だ。
ぶっちゃけた話、朝のHRくらいで既に手招いていた睡魔さん。もー堪忍してくれ。
いやいやちょぉ待て。ここで寝んのがセラカンクオリティやろ。
あーもーあかん。ほんまに寝てまう。
おやすみなさい現代国語のなんちゃら先生
もーボクあかんのです・・・・。
窓際、4月21日、あったかくてたまらない。瀬良が頬杖すらいよいよ限界となったとき
ふと見ると、丹精な顔立ちの同級生、同じ野球部の九条があくびをしていた。
Thank-you Smoking.-----41
「クジョー、ねむたそーやったな」
休み時間、ダラダラしっぱなしで鞄に入れてあったペットボトルに口をつけた瀬良が何故か嬉しそうに笑う。
「やー・・・だって朝練とかひっさしぶり過ぎて」
また「くぁ」とアクビをする九条に、瀬良はケタケタ笑う。
同じクラスになってまだほんの少しだったが、まぁ瀬良にしてはいわゆる「とっつきにくそうなヤツ」のこうゆう面を垣間見れるのは
発見であり喜びである。だって人間アラでもなんでもないとつまんないし。
背が高くてまるで歌舞伎の女形のようなキレ長の目。ハッキリ言って美しいと思う。
かっこええとは違うん。いや、むっちゃかっこえーねんけど、なんつーか、べっぴんさんやん。
冗談とか言ったらヤバイのかなーとか、正直心配していたが
目の前の九条は、意外と温厚で全てを受け入れてくれて、しかも聞き上手で
ああ、九条と同じクラスでよかったと、最近では思うようになった。
「俺もひっさびさやん?むっちゃ寝てもーたし」
「セラカン寝すぎなんだよ」
穏やかに笑う九条に、瀬良もへへっと笑う。
「次の英語は起きてたほうがいいよ。西広先輩があの先生怖いっつってたから」
「うぇーまじかい」
ゲェ、と舌を出して、まぁなんとかなるやろ、と口癖を吐く。
「クジョーは西広先輩とおんなじガッコーやったんやろ?ええなあなんかそーゆーん」
「え?なんで?」
「俺なんかもー言語からしてアウェイやん。むっちゃ緊張すんで、先輩としゃべるとき」
「ウソだぁ。そうは見えないけど?」
にこっと笑った九条はやっぱり大人っぽく、こりゃモテてんちゃうんかーと思う。
「いやんバレてたん?」
「バレてんでー」
ヘッタクソな関西弁が腹立・・・たない!ステキっすクジョー兄貴!!!!もーそんな感じ。
「でもアレやな。さんむっちゃええよな!」
瀬良はほんとうにすぐ話をコロコロ変えるなあと思いながら。
「いい人だね」
「むっちゃええっちゅーねん!カワイイし美人さんやし、ゆーことないやろ」
ははは、と九条が笑う。今日はとても天気がよく、窓際から2列目の九条の足も日差しがかかってぽかぽかと暖かい。
「先輩もみんな慕ってるしね。破天荒っぽいけど・・・監督も信頼してるみたいだし」
なんかすごい人だよね、と言った九条に、大きく頷いた瀬良だった。
「かっこええよな〜さん。まじで」
「花井先輩もかっこいいよね」
「え?なんでソコで花井先輩?」
昼休み。井上と桜はどちらからともなくどちらかの席(今日は井上が桜のほうに)行き、ご飯を広げる。
井上の途切れた左のマユをポリポリ掻くクセを桜が見つけたのはすぐだった。
「イガ、古典のノートとった?」
ぱり、とおむすびをあける音が聞こえて、井上もお弁当のヒモをほどく。
桜がいつも海苔をうまくとれないでパッケージにはりついちゃって悔しがるのを見るのも慣れてきた。
「とったよ?さっく寝てたの?」
「寝てたに決まってんじゃん」
「俺も半分寝てたけどね」
今日の朝練もハードだった。GWに合宿、アンド練習試合(しかも1年メインで使うって!)と聞けば
自然と百枝じゃなくても力は入るってもの。無駄に張り切ってはソコはべつに大丈夫だからみたいな
そんなやりとりを始終かまして苦笑したり、している毎日だったり。
「でもイガはちゃーんと起きてるから偉い」
かぶりついたら乾いた海苔の心地良い音がする。あー、おにぎりにすればよかった。
「なんだかんだで好きなんだよ、すぐ興味わいちゃうから」
ふと見ると、桜の金髪がキラキラ輝いていてなんだかきれいだと思った。
「さっくー、それってブリーチ?」
「そー。イガは天然なの?」
「うちおじいちゃんのおじいちゃんがフランス人なんだよね」
「まじ?ちょ・・・ちょっと遠いけども」
「あはは、よく言われる」
隔世隔世隔世遺伝だよ、と言うと、桜は「そんなんねーよ」と笑う。
「でも私服校っていーよな!髪も自由だし」
「俺は制服のほうがラクだったかも」
「それもわかるけどねー」
ダラダラしゃべりながらふと廊下を見ると、瀬良が九条と通り過ぎて行った。
それを見て、一瞬の間のあと桜がねぇねぇと身を乗り出す。
「うちの野球部って仲良いよなあ?」
「うん。正直、中学ん時と比べモンになんねぇかも」
「俺の中学の野球部だって裏じゃ色々言ってたし!」
でっすよねー、と笑いあって、なんか部活が楽しいとか楽しみとか思っちゃってることに気づいて
意外と自分って野球バカなのかなーって気づいた2人。
そんな楽しい野球が今日もできる幸せ。お天道様ありがとう、愛してるよ。
今日はこの曲を聴いて感想を書いてもらいます。
「魔王が怖いってことだけは伝わってきました」
みんなが必死こいてカリカリ机に向かっているのを尻目に、矢倉はそれだけを書き記しでっかいあくびをする。
午後イチで音楽なんて。寝ろっつってるよーなもんだっつの。あーダル。
ふと隣のプリントを見ると「僕の死に際には天使がくればいいなと思いました」とだけ書かれている。
矢倉はプッと笑い、人差し指で度を越した程強烈な突きを相模に捧げた。
「いったいよヤグ!」
「てめーそんなん感想でいーのかよ」
「ヤグのほうがヒドイよ」
「うっせー」
イッとして見せた変な顔にふふふと笑った相模。制限時間はあと15分もある。死ぬほどの退屈には程よい相手。
空は青い。段々日も長くなっているようで、イコール野球がたくさんできるってこと。
普段でこそめんどくさいを絵に描いたような矢倉ではあったが、気持ちは素直に「野球がすきだ」。
「なーリョーちんさあ」
「なに?」
「花井先輩好きなん?ベッタリじゃね?」
意外と鋭い矢倉でなくても分かるくらい、小さな肩が一瞬ギクッとする。
「そう?まあかっこいいとは思うけど・・・・」
わざとらしいほど天を仰いだ相模に、待ってましたといわんばかりにニヤニヤ顔をキメ込んで。
「おめーさんの事好きなの?」
一瞬、大きな目をさらに大きくしたあと。相模は助走とばかりに口をムッとして少しだけ顔を赤くした。
「・・・ヤグは嫌いなの?さん」
「好きに決まってんしょー。カワイイしかっこいーし大人だしなんかもー色々好き」
それも本音。まだ2度しか会ってないが、すっかりアダ名もつけられて部員のほとんどがそれで呼び合うようになってしまったくらい
絶大な影響力なのだ、ってやつは。
「ヤグも一緒じゃん」
下唇を出した相模に、こいつまじでねらってんじゃねーのとか思ったり。でもそうじゃないことももう分かる。
リョーちんはカワイーんだよな、男から見たって。頭ぐりぐりーってして・・・いじめたくなる。
「一緒じゃねーよ〜リョーちん本気だろ?」
「ちっがうよ!」
「いーじゃん隠さなくてもべつに」
相模は思う。矢倉はとんでもない男だ。とんでもなくカンが良い。そんでドS。自分はきっと1年間オモチャにされるんだろう。
ここで反撃に出たいのはヤマヤマだが、正直野球以外でこの男に勝るものはと言われれば今現在非常に難しい。
「そ・・・んなの、みんなに言わないでよ」
「いわねーよ」
ぼくら元気な西浦高校1年野球部
野球って楽しい。
先輩ってかっこいい。
そんでもって
僕らもまんまとさんの事、好きになりそーっす。
よろしく。
「花井ーエアサロ持ってなかったっけ?」
「何?水谷筋肉痛?」
「寝違えた〜」
英語の授業でっ★そうテヘッと笑った水谷に、ああまたテスト前は俺は先生になるのかと呆れながら
鞄の中にあるエアーサロンパスに手を伸ばしかけた花井に
ドタドタとけたたましい足音が聞こえてきて
入ってくるなり瀬良が正真正銘泣きそうな顔で飛びついてきた。
何故か後ろでは三橋が花井より驚いて涙目。なんでだっつの。
「なっ瀬良!?なんだよお前っ」
「なんで教えてくれへんかったのですかあああ???」
「は?」
「さんが彼女やなんて卑怯やないですかあああああああ!!!」
ぼふっと花井の顔が赤くなる。
「は!!??」
「セラカン!もーすいません花井先輩・・・」
ひっぺがしにかかる九条に、何事かと2年生は呆然としたり笑ったり。
「クジョー!お前は悔しくないんかあああああ」
「ハイハイ」
「あかんで!!そんなんあかん!俺のアイドルとらんといてええええええええ」
もっさもさしたツイストパーマが半裸の花井にまとわりついてくる。もーうざい!なにこのコ!
「これから3年間お花畑のオアシスにするって決めたんや!!それなのにいいい」
うわー!!!とやり場の無い悲しみをぶつけた瀬良に
素直すぎるだろコイツ、と阿部はてんで呆れ顔。
心配しなくたって、花井と付き合っててもいいって思えるくらいの女なんだよって
いつか瀬良も気づくよーって
ユートピア栄口が苦笑してみても、べつに伝わるわけでもなんでもない。
散々わめいてガックリ肩を落とした瀬良を見ながら
花井はコッソリ九条に聞いてみた。
「・・・・・・なんで知ってんの?」
「いや・・・・花井先輩見てれば気付きますって」
誰でも。
「あぁ・・・そう」
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