一発でこのTシャツがプロジェクトセカンズのモノだって見抜いた相模はすごいと思う。
そんでもってどっかで見たと思ったって言った巣山だってすごいと思う。
さんに買ってもらったんだなーって見抜いた阿部はすごくない。そんなんもう、大体察しつかれんの分かってたから。
それから教えてもらった。
A/sacの中で、今期で無くなってしまうブランドがある事。
そのブランドはヴェニスでスワロフスキーを買い付け、とてもステキなアクセサリーをデザイナーが1人で提案していたのだが
価格設定がほとんど原価割れであまり利益にならず、あえなく今期撤退となってしまった事。
デザイナーの名前はスサキ。
ブランド名はA love You.
もう二度と会うことができないであろうあの人に
せめて名前くらい、伝えておけばよかったなあと
イニシャルにAを持つ少年は、少しだけ胸がキュっと痛んだ。
Thank-you Smoking.-----43
件名:お誕生日会のお知らせ
本文:来る4月29日、巣山と花井の
ちょっとしたお誕生日パーティーやりませんか?練習後!
参加してもいいって人は水谷実行委員長に返事ください。
PS☆会長はさんだぞ!
ひそかに巣山と花井を除く部員全員にこのメールが出回ったのは数日前。
そして見事、このPSのおかげかどうかは定かではないが全員参加(ちなみに浜田も)という快挙を成し遂げ
本日、の知り合いだという気のいいジイサンのやっているふっるい喫茶店に全員集合と相成った。
時刻はまだ朝10時。休日の「昼から練習」の前だ。帰りに集合はさすがにバレるのでこれは得策だったと言える。
「おー、おはよー」
マヌケで、でもさんらしい挨拶をバラバラに集まった全員が受け、
気遣ったがジイサンに頼んで大盛りのモーニングまで用意してくれてたときにはもう惚れちゃうかと思ったね。
フレンチトースト2枚にゆでたまごも2つ。カリカリベーコンにサラダもついて、ヨーグルトもついてオレンジジュース。
ああ素晴らしい。朝マックなんて目じゃねえ。
わやわやがいがいと騒ぎ立てて、それを嬉しそうに見守りカウンター席でタバコをふかしながらコーヒーを飲む。
「ちゃん、いっぱい弟いたんだねえ」
のん気なジイサンがほっほと笑う。はなんだか嬉しくて、弟って言っちゃっていいのかな・・・言えれば幸せ。そんなふうに思う。
タバコの煙を誰にもかからないように吐き出すと、胸元にあるイチゴをいじって。
「ごめんねじいちゃん、2時間も早起きさせちゃって」
いつもは昼過ぎにダラダラ開店、来るのは近所のおばあちゃんやおじいちゃんばかり。
カウンターに隠れて囲碁や将棋のセットがあるのも、はとっくに知っている。
そんながふとここの喫茶店に立ち寄ってこのジイサンを「じいちゃん」と呼ぶようになるまで、さして時間はかからなかった。
「年寄りは早起きなんだよ、知らなかった?」
「はは、じいちゃん夜更かしばっかしてんのかと思った」
のんびりした雰囲気の中。田島がいきなりに抱きついてきて、その会話は打ち切られる。
「!なんでじーさんとばっかしゃべってんだよお」
「あーはいはい、ごめんね」
ぐりぐりと頭を撫でれば、嬉しそうにニコニコ笑顔。
「元気な弟だねえ」
「ユー、ここのじいちゃんはあたしのじいちゃん。ユーも孫になる?」
「なるー」
そんな幸せな仮想家族。こんなの幸せでたまらなくて・・・いつまで続くかと思うと、かなり切ない。
やなこと考えるトシになっちゃったな。なんかションボリ。
「でですよ、まず場所なんだけど」
30分でご飯を食べ終わったのを見計らって、はカウンターでタバコを吸いながら今回の計画の宗を説明する。
「多分誰かの家じゃ無理でしょー」
確かに。いくら広いと言えども三橋や相模の家(相当広いらしい)では迷惑をかけてしまう。
だからどこかのパーティー会場とまではいかないにしろ、広い敷地を借りる必要がある。
だったらあそこはいやいやでも、とわいわい言い始めたメンバーを割って
泉の横にいた浜田が、手を挙げた。
「あのー・・・まず予算決めません?」
その言葉に一瞬キョトンとした2年メンバー、ああそうかと手を打った1年メンバー。
短い間のあと、栄口が口を開いた。
「そうだよ、いっつもさんに出してもらってばっかじゃん俺ら!」
「だな。そんな出せねーけど、やるんだったらみんなで金出しあおーぜ」
阿部も賛同する。そして満場一致、お一人様1000円で話は進む。ぶっちゃけこれが限界。
や篠岡もあわせて16000円。うーん。
「これじゃ場所だけでとんでまうん違うか?」
「そうだねえ・・・でもみんな結構食べるし・・・」
「じゃあみんなで作らね?」
その言葉に、はムムムと考え込む。
「じゃあキッチンが要るね・・・少なくとも近い場所に」
「そっかー・・・やっぱソレだと高くなっちゃう?」
「なるだろー」
その時。のん気にヨーグルトをつついていた矢倉が、顔に似合わずびしっと手を挙げた。
「ウチとかどうっすか?ダーツバーなんすけど」
「え、ヤグいいの?」
「んー・・・たぶん」
言ってはみたものの、正直どうなのかサッパリ。そんなの当たり前だ。誕生パーティー予定日は有給休暇でもとらない限りGW。
やっぱ無理かなあ。そう思ってまたみんながシンとしてしまったところ。
がニコッと笑った。そうだ、このゴッドスマイル。この顔が出て、不可能だったことは無い。
「じゃーあたしが交渉してみてもいー?ヤグ、おうち連れてって」
「は?」
カチャン、と持て余していたスプーンを取り落とす。
「今日の練習終わったあと、連れてってよ」
ニヤーンと笑ったに、矢倉は少しだけ驚きを隠せないまま、はいと言った。・・・さんの行動力って何なんだろう。
それから何が食いたいだの何が作れるだの、散々騒いだあと12時過ぎになつかしのナポリタンスパゲッティが出てきて
メランコリックな味とサービスに部員全員メロメロになって、絶対ここまた来ようと誓いあって。
普段集合が早い者から順番に出て行き、最後に残ったのは浜田と。
「ありがとねーハマちゃん」
「は?」
なにが?とカウンターに並んでいた浜田がを見ると、真横でふふっと笑う顔。
「いやーなんか色々。嬉しいよおねーさんは」
「なんかよくわかんないっすけど・・はい」
充分満足な返事を頂けたようで、はニコニコ。浜田も、ああいい時間だなと思って静まり返った喫茶店の空気を味わった。
あ、そうだ。そんな言葉に現実に戻ると、はカウンターのじいさんを覗き込む。
「じーちゃん、レモンスカッシュ作ってよ」
はい、と出されたレモンスカッシュは
薄い黄色にシュワシュワと音を立てて、真っ赤なさくらんぼが下で可愛く跳ねているどこよりもオーソドックスなソレで
浜田が味わうように飲むと、おいしーでしょ、と言われてタバコに火をつけるがいて。
ああもう花井、お前どんだけ果報者だよコンチクショー。そんな嫉妬というか羨ましい気持ちが炭酸のように湧き上がる。
その時、カランカラン、とドアが鳴って入ってきたのはおばあちゃん2人。
「シゲさん、もうあいてるの?」
「ああ、いらっしゃい」
「あらら、若いお客さんだねえ」
その言葉に軽く会釈をした浜田ごしに、が手をあげる。
「ばーちゃん、いらっしゃ〜い」
「あらちゃん。やだあきてたの?何、彼氏?」
ぼっと浜田が赤くなる。
そんな浜田に気づいて、は背中をパンと叩いた。
「ブッ!」
「ばーちゃんの彼氏にするー?」
「もお何言うのよ〜」
「あはは」
正直困りまくった表情の浜田を見て、楽しそうに隣で笑う。
そういえば昔、テレビで言ってた。年寄りに好かれるのはいい人間の証拠だって。
あーやっぱさん果てしないよ。まじで。
バイトがあるから、と13時に店を出た浜田を見送って
は足元においてあった鞄からノートパソコンを取り出し、刺しっぱなしだったコンセントをジイサンに向ける。
「まったくもう」
言葉とは裏腹にどこか嬉しそうにそれを受け取ると、とっくにバレているカウンター内のタコ足配線に繋いであげた。
「お仕事かい?」
パソコンの電源を入れ、無言でタバコに火をつけたがジイサンを見上げて、カラになったコーヒーカップを差し出した。
コポコポとコーヒーを追加すると、横にあった角砂糖を3つとミルクを入れる。
「んー・・・企画案、かな」
「フリーライターがそんな事するぅ?」
わざとらしくにやにや笑ったジジィに、も負けじとニヤニヤを返送。
「ま、かわいい弟の為よ」
「かわいい彼氏、の間違いでしょ」
「うっさい」
いつもの帰り道を、他の人と、しかも女の人と歩いているなんて。
自転車を押しながら矢倉が隣を見ると、涼しそうな顔でがいて。
「俺、彼女でも家とか呼んだことないっすよ」
「なに、ヤグ彼女いたことあんの」
「いやねーけども」
「ははは、ドンマイチェリー」
とっくにムカついてもいいハズなのに。さんの言葉は俺よりもしかして乱暴かも知れないハズなのに。
「チェリーとかマジヘコむんスけど」
「大事にしなよ。そんで捨てるときは思い切れ」
おもっくそもったいぶって男らしくポイって捨てればいいのさ。だって。すばらしいよまったく。
見上げれば月夜はきれいで、街灯の薄明かりのさんは昼間よりずっと大人で。
あのちょっとすっぱいヨーグルトと同じような気分で、矢倉は自転車を押す。
「花井先輩とはいつから付き合ってるんスか?」
唐突な質問に、一瞬キョトンとしただったが―・・・次の瞬間、黙って月を見る。
「えーっとねー・・・まだ2ヶ月ちょっとだよ」
意外と短いな、と思う、本音。でもまあ花井の初々しさを見れば頷けるけど・・・あんまよく知らないけど
花井先輩ってずっとあのままなんじゃないかなとも思ったり。
「食っちゃったんスか」
その言葉はカマかけのつもり。ぽーって赤くなるか下品に笑うか。それでさんってどうゆう人なのか―・・・なんて
俺ってツメ甘かったっけ、こんなに。
「美味しかったよ」
ニコリと笑った顔に。うっわエッロ。そんなふうに思ってみたって・・・結局この人って最強かもしれないって感じるだけ。あーあ。
可愛くてかっこよくて美人でいい顔で、話もおもしろくてオマケにたまにエロいんだとよ。こんな女いるのかっつの。いていいのかっつの。
全人類の男性は脅威に思うべきだな。ああ思うべきだ。
さんが本気出せば、誰だってひれ伏すんじゃねーの?こえーよ。
次の日矢倉から2名を除く全員に
「ウチの父ちゃんはおろか母ちゃんですらさんにメロメロになって収集がつかない」と聞き
作戦は見事、遂行される事となったことを知った。
2008年7月、「ラヴ・サイタマ」夏特集号企画案
『〜今宵はダーツバーで〜』
そのたった一枚の企画書を、先日電話で「なんかいい案ない?」と言ってきた地元情報誌の編集部にFAXして
夕方までにOKをもらって
そのまま企画書にスマイルをはっつけてあとはちょっとのビール。
いいかい若者。
大事なのはね、行動力なのだよ。
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