『それで、大体決まったんですけどいいですか?』
「うん」
『えーっと、田島君と三橋君と沖君、九条君と桜君と矢倉君がセッティングで・・・』
「はいはい」
『阿部君と西広君と栄口君が買出しで』
「うんうん」
『私と、浜田さんと泉君と瀬良君と井上君と相模君が料理係!』
「おっけー」
『そんなかんじです!』
「あれーフミキは?」
『あ、水谷君は・・・俺は実行委員長だからさんと行動するって言い張ってて・・・』
「あっそおー・・・うまいこと抜けたなあいつ」
『マズいですよね?やっぱ』
「んーん、いいよべつに。それよりごめんね忙しいのに、色々仕事増やしちゃって」
『いーえ。ふふ、楽しいです』
「・・・・かっ、かわいいなあチヨちゃん!」
『やだ!何言うんですかもーさんは!』
「もー嫁に来てよ嫁に」
『花井君に怒られちゃいますー。じゃあおやすみなさい』
「ちぇーっ。おやすみっ」













Thank-you Smoking.-----44






























ヘッドホンから流れる音楽に、電車の揺れが心地よい。
珍しく車を離れてみる気になったのは何故だったのかは分からないが
今、はこうして電車に揺られている。
何度か乗り継いで新宿駅に到着。少し長い旅だったな、と背を伸ばして降りて
少し見ない間に様変わりしたものだと東口のアルタの向かいの喫煙所でぼーっと一服。
さて来てはみたものの
いったい何を買えばいいものやら。
そう、今日は花井の誕生日プレゼントを買いに、はるばる埼玉からこの歓楽街にやってきたのだ。



街にはいろんなものがひしめきあっていた。
靴も良いし、服だってやっぱりいい。CDもあるなあ雑貨も捨てがたいなあああもうなにがいいのやらああああ!!!
ゴエエエ!!と心の中で絶叫した
困り果てて一旦紀伊国屋に入って、適当に男性モノの雑誌をめくる。
こんなモンめくって何がいいか分かるんなら苦労しねーんだよ、とおかと違いのヤツ当たり。
すると、興味深いページにたどり着き、反射的に顔を寄せた。
『特集!彼女からもらって嬉しかったもの・引いたもの』
・一度だけなんとなく「欲しい」って言ったものを覚えてくれてて、くれたときはマジカンドーした!
・やっぱペア系っしょ!
・ハートに限る!
・手編み系はマジ勘弁!
・持ってるモノはリアクションにも気ぃ使う!
・度のあってないメガネ
あっそー、としかいえない。なんだこのクソ雑誌。オマエら人様からモノもらっといてゼータクなんだよ!死ね!!
叩き付けるように本棚に雑誌を戻し、深く大きな溜息をつく。
もうなにがいいのかわからない。まだ新宿について1時間しかたってないのに、もーおばちゃんお手上げ。


結局何もらったって嬉しいものでしょうよ、そんな一般論が脳をよぎったって
できれば喜んで欲しい。欲しいものをあげたい。
だけどどうにもこうにも浮かばない・・・花井の欲しいもの。

今まで色々しゃべったりメールしたりもしたけど、彼は本当に無欲だと思う。物欲がまるでない。
甲子園行きたいの知ってる。でもそんなんどうにもしてやれない。
オーストラリア行きたいのだって知ってる。でもオーストラリア旅行なんて、自分の都合も向こうの都合ももう何もかもが無理ムリざんまい。
あーもーバットでもあげるぅううう???やぶれかぶれになってみたって
いざどれがいいのかなんてきっと本人にしか分からない。
それに「あたしンち」で見たんだ。「相手の得意分野は避けろ!やるなら自分の得意分野」
あたしの得意分野?言葉?手紙でも書けってか?んなハズい事できるか!
っつーか小学生じゃないんだから手紙だけってありえねーだろどう考えても。逆に「お金ないんスか?」って心配かけるわ!
ああもうどうしようどうしようもうほんっといっぺん死んでこい自分。

ふと鞄の中から携帯を探り当てる。
フフフ・・・もうきーちゃおっかなー直接さあー何が欲しいってきいちゃえよ
そしたらこの苦しみから解放されるぜ・・・ウフフゥ・・・・
その時、ドン、と若いネーちゃんが肩にぶつかってきて、ハッとなる。
いかんいかん、何を考えているのだ。それじゃ元も子もないじゃあないのさ。起きろ!目を覚ませ


カフェラミルの窓際の席に座って、道行く人を見下ろす。
タバコを無意識に増やしながら思う。欲しいものってなんだろう。
人間って、目に見えるものを欲しがる。言葉では愛だのなんだのって言うけども
結局じゃあ「はい、愛です」なんていわれたところでリアクションは「は?」だ。決まってる。
だから人は、「モノ」に見えないものをこめる。
「2人が付き合っている証拠」として、ペアのリングやストラップ。
「1年後も好きでいる証拠」として、長袖のシャツを贈ったり。
でもそんなもの、ただの強要でしかないんじゃないかとも思う。

付き合っている事も、1年後はおろか1秒後だって壊れてしまうかもしれない事実。
実際、そうやって捨てられてきた「モノ」は世界に何億あるだろう。
タトゥーを自分自身に刻んだって、何も確かじゃない、リアルじゃない。
ただモノだろうが名前のタトゥーだろうが、同じなのは「希望」。
離れてみれば「ああそんな希望もありましたわいな」と言われるのを何度も実感しながら
人は「希望」を望まずにはいられない。
今その時好きな人への感情を、希望にかえて夢を見るのだ。
そんなの必要かなあ。そんなのってなんか・・・
掘り下げなくていいとこまで掘り下げて、また頭を抱える。
何言ってんの自分。花井君は・・・こんな汚れた大人じゃない、まだ17歳にもなってない、ただの高校生なんだよ。
愛とか夢とか希望とか、両手じゃあふれるくらい持ってるに決まってる。持ってて欲しいとすら思う。



でももし―・・・でももし2人が別れることになったら?
花井君は、今日自分が買うであろう「何か」を捨てるだろう。
ゴミ箱にポイかもしれないし、なきながら川原にポイかもしれない。
そのとき、それにこめられた夢や愛や希望ほど邪魔なものはないと思う。
もしこれから彼に人生の選択が現れた時―・・・「何か」は邪魔をしないだろうか。
花井君は優しい。アホほど優しい、自分に甘い。
その彼を繋ぎとめるためみたいに見えないだろうか。例えば自分が何かをあげたとするなら。
ああなんでだろう。今までいろんなものを、ただ単にあげたいからあげていただけなのに。
なんでこんなに考えちゃうんだろう。いざとなると、なんでこんなに―・・・・
まるでマーキングだ。
自分のモノの証のように、自分のお金で彼に服を着せて喜んでいた。
ああバッカじゃねーの。まじでクソバカだ。
花井君が笑ってくれてるからいいと思ってたんだ。花井君が許してくれるから、奢ってたんだ。
なんだよ自分。もう最低のウンコヤローじゃん。

何故か突如涙ぐみはじめた不可解な女に
灰皿を代えにきてくれたウエイターのお兄さんは、ロコツに不信感をあらわにした。




結局何も買う事もできないまま乗った帰りの電車の中
ヘッドホンから流れる音楽も、穏やかな振動も
なにもきもちよくない。


ねぇ花井君
なにも買えないんだけど

これってあたしが・・・ずっと花井君と一緒にいる自信がないって事なのかなあ。
それとも
それとも、花井君がずっとあたしの事好きでいてくれる自信ないって事なのかなあ。



結局
それはどっちもあるって事で

なんだか久しぶりに感じた「恋の辛さ」みたいなものは




小さな山戸の体を押しつぶしていく。


























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